天才・ジミヘンの適当過ぎるチューニングが生み出すエモいハーモニー

私は趣味でギターを弾く。とくに上手なわけではないが、長く続けていると、それなりにこだわりも出てくる。テクニックも大事だが、もっと重要なのはチューニングである。どれだけ演奏が上手でも、音が狂っていたらすべてが台無しだ。これは昔からの持論である。

そんな私の考えを少し揺さぶる動画を見た。 アメリカで活躍するギタリストで、バークリー音楽大学の教授でもある トモ藤田氏のYouTubeである。

普通、チューニングはチューナーを使う。誰でも正確な音が出せる。しかし藤田氏によれば、昔ながらの音叉を使い、耳で合わせると、チューナーでは得られない“心地よい和音”になるという。具体的にはAの音だけ音叉で鳴らし、あとの弦は耳で合わせる。

興味深いのは、その“心地よいチューニング”をチューナーで確認すると、一部の弦がフラットになっている点だ。 具体的には、6弦・3弦・1弦が少し低め。 逆に 5弦・4弦・2弦は正確。 耳で合わせると、こういう微妙なズレが生まれるらしい。

単音としては正確ではないが、和音として鳴らすと美しい。 デジタル的な“正解”より、耳が感じる“気持ちよさ”を優先すると、こうなるのだという。

この話を聞いて、ふと思い出した人物がいる。 ジミ・ヘンドリックスである。

ライブ音源を聴くと、曲と曲の間にチューニングをするのだが、それがもう適当極まりない。昔から「なぜあんな雑な合わせ方で、あれほど美しい音が出るのか」と不思議だった。

しかし今回の動画を見て、少し腑に落ちた。 もしかするとジミは、チューナーでは測れない“エモいチューニング”をしていたのではないか。 耳だけを頼りに、和音として最も気持ちよく響くポイントを探していたのではないか。

天才だから、それが自然とできた可能性は否定できない。

ギターというのは不思議な楽器である。 トモ藤田氏によれば「正確に合わせると音が硬くなる」という。 しかし少しズレると、逆に豊かになる。

デジタルの時代に、耳で合わせるという行為は古いようで、実は本質的なのかもしれない。 チューナーが示す“正しさ”と、耳が感じる“気持ちよさ”。 その間にある微妙なズレこそ、音楽の面白さなのだろう。

ジミ・ヘンドリックスのあの音も、きっとその“ズレ”の中にあったのだと思う。 私の説はどうだろうか。読者の皆さんにも、ぜひ考えてみてほしい。

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