ヘッドだけでは許されない? フェンダーの警告から始まる「ストラト呪縛」からの解放 【フェンダー知財論争2/3】

フェンダー社が仕掛けた今回の「ストラト知財論争」。もしも、フェンダー社の主張が法的に認められ、他社がストラトタイプ(Sタイプ)を作れなくなったら、一体どうなるのだろうか。これまでのギター業界では「ヘッドの形さえオリジナルにすれば、ボディの形はマネしても大丈夫」という暗黙の了解があった。しかし今回の警告は、そのボディの形状やパーツの配置そのものも標的にしている。一見すると市場の選択肢が狭まる暗いニュースに思えるが、歴史を振り返ると、そこには全く別の「興味深い未来」が見えてくる。

時計の針を1970年代の日本に戻してみる。当時の日本の楽器業界は、完璧に模倣した、いわば「丸パクリ」のコピーギターがそこかしこで見られた。フェルナンデスはフェンダーを、グレコはギブソンをロゴまで含めて徹底的に模倣していた。さらに、ギターをフェンダーのブランドである「ストラトキャスター」や、同じくギブソンの「レスポール」として販売していた。しかし当然、本家から厳しい目が向けられ、法的な警告や訴訟のリスクに直面することになる。

こうした圧力を受けて、日本のメーカーは方向転換を余儀なくされる。本家からの警告や圧力をきっかけに、各社はただマネするのをやめ、独自の路線を歩み始めたのだ。コピーで培った高い技術力をベースに、独自の形状や革新的なアイデアを盛り込んだオリジナルモデルを開発した。結果として、世界に誇る高級路線や、独自の素晴らしい「ものづくり」へとシフトしていった歴史がある。この独自路線への転換は、消費者としても新しい選択肢が増え、大いに歓迎すべきことだった。

今回のフェンダーの動きが、かつての日本が証明したドラマが、令和の時代に世界規模で繰り返されるのではないか。しかし「もしも」の妄想として、ボディの形までもがフェンダーの著作権として完全に独占された世界を想像してみる。

そうなれば、現在の多くのメーカーは、ストラトっぽさを避けるためにさらなるデザインの「工夫」を強制されることになるだろう。ピックガードの絶妙なライン、コントロールの配置、ボディのコンター加工など、本家の目を盗むためではない、独自の美学を持った「新しいSタイプ」をゼロから生み出さなければならなくなる。

それは裏を返せば、これまでの「ストラトキャスターの呪縛」から業界が解き放たれ、より多様で個性的なギターブランドが次々と誕生する時代が始まるかもしれない。逆境がクリエイティビティを刺激し、プレイヤーがもっと多様な製品を楽しめる時代が来る。かつての日本のものづくりが証明したドラマが、令和の時代に世界規模で再び起こるのではないか。そんな前向きな妄想を、私は密かに楽しんでいる。

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