高コスト体質に苦しむ? 老舗フェンダーに望む「圧倒的な革新」 【フェンダー知財論争 3/3】

フェンダー社が他社に送った警告書。この一連の騒動を、文化や法律ではなく「企業の経営面」から見ると、また違った背景が見えてくる。それは、華やかな楽器業界の裏にある、老舗企業ならではの問題だ。

一般的に、長い歴史を持つ大企業や老舗組織は、時代を重ねるごとに組織が大きくなり、また「高コスト体質」に陥りやすい。例えば、私がよく取材する流通業界では、百貨店がその典型だ。高いブランド力や付加価値を特徴とする一方で、一等地の維持費や人件費といった膨大なコストを抱えており、それだけに変化への対応に苦慮してきた。また、身近な例では生協(コープ)も、多くの店舗事業で赤字を出し、それを無店舗(宅配)事業の利益で補うという、構造的なコストの課題を抱えているのが実情だ。

翻ってギター業界を見てみると、フェンダーと並ぶ両巨頭のひとつ、ギブソン社が2018年に一度、経営破綻(民事再生法の適用を申請)したことは記憶に新しい。伝統にこだわり、肥大化した組織や多角化の失敗によるコストが経営を圧迫したのではないかと、私は考える。エレキギターを代表するブランドといえど、決して安泰ではないという厳しい現実がある。

そう考えると、今回のフェンダー社の強硬な動きも、単に「自社の権利を誇示したい」というプライドだけの問題ではないという見方もできる。むしろ、本家としての重い看板と高コスト体質を維持するために、なりふり構わぬ防衛策に打って出ているのではないか、と思えてくる。

近年の楽器業界は、コロナ禍の「巣ごもり需要」が一段落し、世界的な需要の反動減や在庫の過多、さらには原材料費の高騰という逆風に晒されている。苦しい競争環境の中で、本家と同等以上のクオリティを持ち、なおかつ効率的な生産体制で猛追してくるPRS(ポール・リード・スミス)のようなライバルは、フェンダー社にとって大きな脅威に違いない。

高コストな組織を維持するためには、高価格帯の市場で大きなシェアを維持し続ける必要がある。今回の警告書は、法的な正当性を主張する一方で、強力な競合ブランドを排除して自社のシェアを必死に死守しようとする、老舗企業の「防衛本能」の現れのように思えてならない。

ビジネスの世界は厳しい。それは、華やかな音楽の世界でも同じである。しかし、フェンダーは多くのギタリストにとって憧れのブランドだけに、いちファンとしては、他の追随を許さない本家にしかできない革新やものづくりの進化に力を入れ、圧倒的な差を見せつけてほしいと願うばかりだ。

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