最近、仕事で北陸に行くことが多い。ここ数ヶ月の間でも3〜4回は足を運んでいる。だがその度に文句を言いたくなる。なんとかこの不満を解消することはできないだろうか。今回は、そうした胸の内をいつもと切り口を変え、経済学の視点で考えてみたいと思う。
2024年3月、北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸した。東京から北陸へのアクセスが著しく向上し、この地域は大きな経済的利益を享受できるようになった。
一方、不利益を被ったエリアがある。私が住む京都、および関西だ。
かつて金沢に行くのには、特急列車に乗れば、2時間30分近くリラックスして過ごすことができた。しかし、現在は福井県の敦賀駅での乗り換えが必須となり、利便性、および快適性が著しく低下した。われわれ京都人にとって「改悪」である。ここに私は腹が立っている。
経済学では「誰も損をすることなく、誰かの満足度を上げること」をパレート改善と呼ぶ。この新幹線延伸は、東京の満足度を上げたが、京都の満足度を明確に下げたため、パレート改善ではない。つまり、これは経済学の視点からすれば「公平性」という要件を満たしていないことになる。
パレート改善でなかった場合、どうするか。議論の焦点は次の段階に移る。「カルドア=ヒックス基準」の導入を考えてみよう。
これは、「得をした人の利益の総和が、損をした人の不利益の総和を上回るなら、その政策は全体として望ましい」とする考え方だ。新幹線延伸による東京圏の利益はとても大きいので、この基準は満たしていると思われる。
しかし、同基準を本当に成立させるには、大切なことが抜けている。それは、「得をした人(地域)が、損をした人(地域)に適切な補償を支払う」というステップだ。この補償がなされて初めて、延伸の政策は「公平性を確保した望ましい状態」に近づく。
この基準を満たすために私が提案したいのは、京都駅〜敦賀駅間の列車料金に対する割引を適用することがよいと思うのだ。たとえば京都から金沢へ行くのが、従来の2割引とか3割引になったら、本来は別のところへ遊びに行こうと計画していた人の旅行先の選択肢に十分なりえる。すると客数が増えるので、値引き分の収益性低下ををある程度、カバーできるかもしれない。
新幹線開通による東京圏からの増収、または運行経費の一部を「乗り換えストレス補償ファンド」として計上する。そして、京都と北陸を往来する旅客に対し、特急・新幹線料金を特定額割り引くというのはどうか。最近、何でも値上げばかりだから、これは、企業イメージの向上にもつながるはずだ。
私が主張したいのは、単なる運賃の値下げではない。これは、新幹線延伸という政策の犠牲となった地域の不利益を金銭で定量化し、その価値を正式に認める「対価」にするという考え方である。この補償が実現すると、少なくとも京都は「不満を抱えたまま放置された」という不満から解放され、この政策が真に公平性を目指したものであったと評価されるようになると思うが、どうだろうか。
経済政策の成功は、その利益の総額だけでなく、分配の公平性も重要な視点だと思う。北陸新幹線延伸は、真の公平性を考えてみてはどうだろうか。



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